朝顔じゃなくて三郎

フジテレビ系で現在放送中の
月9ドラマ『監察医 朝顔』を観ている。
監察医、というタイトルなので司法解剖やら事件やらは一応起こることは起こる。
しかし、このドラマの肝はそこじゃない。


主人公の朝顔上野樹里)は仕事と家事育児に奮闘している。
朝顔の夫で警官の桑原(風間俊介)は心優しく家族を何よりも愛する男。
元上司の義父とも良好な関係を築いている。ちょっと出来過ぎなくらいの人物。

朝顔の父・万木平(時任三郎)は元刑事。
真面目で温厚な人柄。朝顔たちと同居していたが退職し東北にある妻の実家へ移住した。


↓ 以下ややネタバレしてます




一人暮らしを始めた平は
東日本大震災で行方不明となった妻の手がかりを探す日々を過ごす中、自身の記憶力に違和感を覚えるようになっていく。
近所で食堂を営む奥寺美幸(大竹しのぶ)は平の妻・里子と同級生であり
里子の父・弘之(柄本明)は食堂の常連で、平もよく通うようになりふたりは親しくなる。

ここで強く言いたいのは
名前が並ぶだけで内容は知らずともその作品を観たくなる役者が揃っていることだ。
これでもうこのドラマは勝ちと言っていい。

私は朝顔ではなく時任三郎演じる万木平がこのドラマの主人公だと思っている。

平は「家族に迷惑をかけたくない」という思いで懸命に自身の異変と向き合おうとする。
「自分が変わっていくようだ」
朝顔に話す平。
自分の知らないところで自分自身が変わってしまっている。
もし自分が突然それを自覚せざるを得なくなったら恐怖と不安でしかないだろう。
記憶力がどんどん失われていくそのスピードに抗いつつも受け入れていく平のその姿は
私たち観ている視聴者を強く惹き込む。
15日放送回でのラストシーンは観ていて涙腺が崩壊した。

あと平と孫・つぐみのシーンは最高に可愛い(柄本明とつぐみも)。そこは必見なので全員観てください。
それにしても演技が上手いんだよ、つぐみ(加藤柚凪)。びっくりする。

柄本明大竹しのぶ東日本大震災の後もその土地で生き続ける人たちを演じている。
私は被災していないので想像するしかないのだが、あの2人の演技を見ていると本当にあのとき被災した土地に住んでる人の暮らしを垣間見てるようで思わず見入ってしまう。
もちろん被災者が全員こうだと決めつけてるわけではない。実際いると思わせる説得力がすごいのだ。柄本明大竹しのぶやるから嫌味がない、そういう演技をできる人は限られてると思う。


正直言って『監察医 朝顔』は
監察医がテーマのドラマとしては評価が低いと思う。
過去にフジテレビは
きらきらひかる』という名作を生み出している(ドラマは1998年に放送。その後もスペシャルドラマや続編が制作された)。
なので、制作チームと役者が揃えば面白いものを作れるはず(そのくらい監察医のシーンは信じられないほどにダルい)。
でもそれでいいのだ。このドラマのテーマは、家族だから。